60才の誕生日を迎えた妻が、「あ〜あ、もう還暦だって、やんなっちゃうなあ!」と毎日ぼやきまくっている。
 「るっせーなあ、が、まあ、還暦おなぐさめ旅行でも行くか」と、ちょうど、地方公務員の娘がこの4月からロンドン事務所に出向になったのを幸い、珍しく夫婦で出かけることにした。
もちろん、私はゴルフが主、妻は町歩き。
 全英オープン開催コースを訪ね歩いて10年。その最後のコース、サンドウィッチの愛称で知られるロイヤル・セント・ジョージスをメインにイングランド南部に出かけてみた。

4月15日(木)

 時差ボケもなく、さわやかな朝。ハイドパーク近くの宿からカンタベリー、そしてサンドウィッチへ。
 A2、M2を経て、まずはカンタベリー大聖堂を見学。普段ならゴルフ場へ一直線なのだが、ま、これからのこともあるので大聖堂フリークの女房に付き合うこととする。

 ロンドンから2時間足らず。さずが、英国国教会の大本山。見事なモノであるが、観光案内は他に譲ることとして、サンドウィッチに向かおう。
 サンドウィッチはカンタベリーから20分ばかりの小さな町。かのサンドウィッチ伯爵さまの領地で、手を休めることなくポーカーをするために、サンドウィッチを作らせたという、ウソかホントかわからぬサンドウィッチ語源の町である。
 まずは、パブとレストランの上にある、Fleur de Lis(あやめの花)なんていう名の、フランスかぶれのちっともフランスの臭いのしないインに宿をとり、この町一番のホテル「Bell Hotel」のテラスでサンドウィッチとビールで昼食。
 女房をそのまま残し、そそくさとロイヤル・シンク・ポーツへ。

 ドーバー海峡に面したこの海岸沿いに、ドーバーのすぐ北から、デール Deal と呼ばれるロイヤル・シンク・ポーツ、サンドウィッチ Sandwich のロイヤル・セント・ジョージス、そしてプリンシーズ Prince's と3つのリンクスが並んでいる。
 いずれも全英オープンを開催したことのあるコースであるが、現在はセント・ジョージスのみがローテーションに組み込まれている。
 シンク・ポーツは1892年創設。1909年と1920年の2回、ジ・オープンが開催され、現在も多くのトーナメントの舞台となっている。セント・ジョージスほどのスケールはないが、プリンシーズよりも数段荒々しいデューン(砂丘)のコースである。小ぶりのクラブハウスにマストを模したフラッグポールが「リンクスは海、ハウスは港」と主張している。

 グリーンフィは午後1時を過ぎると割引になって、それでも75ポンド(約15.000円)、けっして安くはない。
 午後1時45分ティーオフ。
 白マークから、1番は360ヤード・パー4。おだやかな晴天で、まずはスプーンでティショット。残り158ヤードばかりをグリーン手前のクリークを警戒して5番アイアン。が、これが大オーバー。ボールが見つからず、さっそくダブルパーの8。
 2番、399ヤード・パー4。ボギー。3番、508ヤード・パー5。ボギー。4番、148ヤード・パー3。ボギー。…、…。
 ドライバーはまあまあ、ロストも1番だけで、そう難しくもなく感じるのだが、パーがとれない。アイアンがきちっと当たらないと届かず、ダフッたりするとダボが待っているという感じ。そう、リンクスコースそのものなのだ。
 グリーン?ヤーテージブックにはこう書いてある。
 -the greens too are rolling and present players with a test of imagination to even get the ball close to the hole, …
 そう、リンクスを楽しむためには想像力が必要なのだ。と、気づいたのは18番に来てから、最後は2オン2パットでナイス・パー。

コースのすぐ向こうはドーバー海峡。右・18番。

 午後5時5分、ホールアウト。

4月16日(金)

 ロイヤル・セント・ジョージスは2003年の第132回ジ・オープン開催コース。1番でタイガー・ウッズがロストボールをしたあの大会である。
 クラブのホームページから予約をし、95ポンド(19.000円!!!)のうち、15ポンドはカードで予約金を支払うシステムで、キャディーマスターに当日、残りの80ポンドを支払い、プレーフィ支払い済みカードをキャディバックにつけてスタートする。
 私の前でアメリカ人らしい2人組がエントリーしていたので、一緒にどうというと、「いいね」という感じで、キャディーマスターに「3人で行くわ」というと、「いや、今日は2ボールかシングルボールだ」という。「えっ、4人組もいるぜ」と問いただすと、「あ、あれ、2ボール・フォアサム」という。見るとなるほど2人しかティーショットをしていない。
「残念だな!」とわかれて、私のスタート、遠い10番ティーに向かう。
 ロイヤル・セント・ジョージスは1887年の創設。
 当時、Dr Laidlaw Purves と Mr Henry Lamb というロイヤル・ウィンブルドンの、いずれキャプテンを務めるだろうと言われた2人がいて、もう一つ、自分たちのコースを造ろうと物色していたところ、このサンドウィッチのデューンを見つけたのだそうです。
 ここでのジ・オープンは1894年が最初。1949年から1981年までの中休みはあったものの、昨年(2003年)ベン・カーティスの優勝まで、延々と開催コースを保っている。ジ・オープン開催コースの中でも最も難度の高いコースとして知られる。

10番

 午前9時15分、快晴の10番ホールからティーオフ。
 ティはチャンピオン(ブルー)と白の2つ。当然、白から。
 ピンフラッグはイングランドの国旗と同じ、セント・ジョージスクロス。
 ダボ、パー、トリ、ボギー、そして問題の14番、パー5。右にOB杭がティからグリーンまで続くコース。
 かって首位を争っていた、ベルンハルト・ランガーがこのOBに泣き、昨年は第3ラウンド、デービス・ラブⅢ世がOB杭に当たってフェアウエーに戻って来るというドラマチックなホールである。いづれもドライバーでの悲喜劇が生み出されるOBではある。
 OBはともかく、白マークから290ヤードの所をクリークが流れている。ランすれば届くので迷わずスプーン。
 トップしてゴロでクリークの手前70ヤード、5番アイアンで刻んで9番でオンしてパー。
 2オンをねらわなければ簡単じゃん!

14番、OB杭と道の間にはクリークが流れる。(右=)フェアウエーからティを振り返る

 インは9オーバー。

18番グリーンとティ(右)
1番。スタート小屋(右)とスターターの小屋(左)
4番。名物のバンカーとそれを見渡すティグランド。バンカーとバンカーの間を越えるのがベスト。

 さて、1番に移り、はからずも昨年タイガー・ウッズがロストにした右のラフへ。ちゃんと見つかって5番アイアンで刻み、AWで3オン、2パットのボギー。7番のブラインドのロングはティのベンチで見ていた老人に誉められるナイスショット。スプーンで2オン。
本シリーズ初めてのバーディ。
 12時50分、ホールアウト。アウトは5オーバーの40。トータル84なら、上出来じゃん。但し、天気は上々、風はそよ風。

コースの中をイギリス独特のフットパスが通っていて、
歩く人優先の注意書きが立っている。
9番とクラブハウス(右)

 たしかに味わいがあり、大地に溶け込むような、逆に言えば自然に抱かれるような感覚のラウンドでした。
 思わず時々立ち止まって大きく深呼吸をしてしまい、ひとり、ニヤニヤとリンクスを堪能しました。スコットランドの「ピリッ」「ヒンヤリ」ではなく、あたたかく、柔らかい薫りがしたようです。これかな?「サンドウィッチはフランスの薫り」と、誰かが言っていたのは。

 
サンドウィッチ

 サンドウィッチに戻り、女房と合流してドーバーをとおってロンドンへ。ハロッズで買い物をし、娘のウィークリー・マンション。

4月17日(土)

 午前中、ポートベローの骨董街やウエストミンスターなど、お上りさん。昼をソーホーの中華料理。午後、ウィークリーマンションからウィンブルドンのマンションへ引っ越し。日用品などを買いだし。

4月18日(日)

 曇り時々雨の中、M3を経てストーンヘンジへ。

草原の丘、石、空の3つが、そこにあるという感じ。すごいスケールでもないが、「ふ〜ん」と唸らされる。
右は復元想像図。


 バースの宿に荷物と女房を降ろし、雨の中をカンバー・ウェル・パークへ。
 バースから20分たらず、1994年に出来た比較的新しいコースである。
 レッド、イエロー、ブルーと3つの9ホールがあり、プジョー・ゴルフガイドのコース評価は17点。かなりの高評価である。
 受付で32ポンド(日曜日で少し高い)を払い、パブでチーズバーガーとビールで昼食。
 1時35分、雨の中をレッドコースからティオフ。
 スケールもあって、適度なアップダウンのパークランド・コース(林間コース)。
 白から、1番・399ヤード・p4など、400ヤード前後のミドルホールが多く、雨のためランが全くないのでセカンドがつらい。

 レッドコースを終える頃、雨が上がり、イエローコースへ。
 途中、若い4人組と1回すれ違っただけで、見渡す限り人っ子一人いない。が、グリーンの前に多きく池が立ちはだかったり、469ヤードのミドルに、「まったく長い!」とつぶやいたりして、もくもくと回る。
 景観はいかにも古都・バースの近くのカントリーサイドという感じで、手入れも良く、晴れていれば味のある最高のコースだろうと感じた。こんなコースで日曜日、ビジターが6,400円程度で回れるって、いいよなあ〜。
 18番は362ヤードの上り一辺倒のミドル。思い切って新品のディスタンス系でない高価なボールを使ってみる。が、左目のラフへ。「暫定球!」とつぶやいて安物のプリセプトで打ち直し。
 ニューボールはなく、プリセプトを4番アイアンでオン。ダボ!トータル・スコア…?聞かないでやってくだせい。
 5時、スコアカードに19番と書いてあるブルーコースを横目で見て、ロッカーで顔を洗い、バースに戻る。

ピッチマークを直してね。という、楽しい看板。

 バースでの宿はインターネットで探したトラベロッジ Travelodge 。
 イギリス各地にあるモーテルのチェーンであるが、ここバースは市内中心部にあり、石造りの古い建物の外観はそのまま、中をアメリカンタイプのモーテル風にしてある。風呂も、ベッドも大きく、清潔で快適。おまけにセールスとかで、2人1泊25ポンド(約5.000円)。
 さっそく一風呂浴びて、隣の高級シーフードレストランでエビ、カニ、スープ、サラダ、ワインを堪能。こちらは豪勢に2人で50ポンド。

4月19日(月)

 バースを出て、A4→A37、ブリストルの町を抜けてA5へ。途中のドライブインで朝食兼昼食。27のインターで降り、Barnstaple 。A39でWestward Ho!のロイヤル・ノース・デボン・ゴルフクラブ。11時頃着。
 ティタイムは午後2時08分なので、クラブハウスでコーヒー、妻はビール。
 しかし、このコースの愛称は地名のウエストワード ホーなんだけど、なんでビックリマークがつくんだろうね。
 ともかく、今夜の宿を探しに町に戻るも、適当なのがなく、近くのビドフォードBideford のB&Bに女房をおいてコースに戻る。


 ロイヤル・ノース・デボンは1864年、かのオールド・トム・モリス設計のリンクス。イングランド最古のコースである。
 プロショップでティタイムを早めてもらい、グリーンフィ34ポンドを払って、手引きカートを引っ張り1番ティへ。
 素振りをしていると、ブルーのセーターのおじさんが近づいてきて、一緒に回らないかという。ああ、いいよ。というと、しばらくしてバッグを担いでやってきた。お互いに名前を交わす。彼はマーク。ここのメンバーでハンディ14とのこと。
 午後1時30分、1番ティ。
 ま、教えてもらうから先に打ってというと、ためらうことなく白の前の黄色のマークから打ち始めた。
 総体的に距離は長く、400ヤードを越えるミドルも4ホールあるが、リンクス特有の地面が固く、フェアウェーに行くと良く転がり、あまり気にならない。

4番、名物の壮大なバンカーを越えていく。344ヤードと短いのでスプーンで残り115ヤード。
左=マークさん。右=17番グリーン前のクリーク。

 風は少し強かったが、ボギーが続き、ところどころにパーがあってまずまず。マークさんは上の左の写真にあるような丈の長いブッシュに打ち込んだりしてアンプレアブルもあり。
 いかにもトム・モリスを満喫していたのだが、15番、マークさんの言ってることが良くわからず2打目をブッシュの中に打ち込んでロスト。17番の3打目もクリークの存在がわからず、はまってダボ。18番も同じような川が流れていて、これも知らずにダボ。
 メンバーと回っていて、説明を聞きながらで安心していたのが失敗。やっぱり初めてのコース。ヤーテージブックでレイアウトをよく見て、自分の飛距離で計画をしてショットをしなければと反省。
 もうひとつ気づいたことは、2人でのラウンドは楽しいのだが、自分のペースで立ち止まって風景を楽しんだり、写真を撮ったりするのを遠慮してしまうこと。何度も回るのなら別だが、1回きりで純粋にコースを味わうとなると一人の方がいいのかも知れない。
 しかし、リンクスの風、空、海。文句のないコースである。

左=コースから見る街並み。右=ビドフォード湾。右のローレッジ川の向こうにサウントンといういいコースがある。

 午後5時前ホールアウト。マークさんとハウスでシャンディ(ビールをレモネードで割ったもの)を飲みながら話す。
勤めはロンドンでここは実家があり、生まれ育った土地。年会費は400ポンドで会員のプレーフィは一切不要。が、あまり来れなくて年に2、30回かなあ、といっていた。老後、入れてくれるのなら入会してもいいなと思った。

4月20日(火)

 この先にサウントン Saunton という1897年創設のノース・デボンと競う名リンクスがあるのだが、ま、せっかくのイングランド、観光サービス。
 M5からM4、カースル・クーム、サイレンセスター、バイブリーなどを経てウィンブルドンに戻ることとする。
 以下、写真アルバム。

左=カースル・クーム。右=カースル・クームのマナーハウス。
サイレンセスター大聖堂
バイブリー、絵はがき的イギリス第一の美しい村。

4月21日(水)

 あっというまの8日間。今日の夜にはヒースローを発たねばならない。
 朝起きると小雨が降っているが、どうやらやみそうな気配だ。娘は出勤したし、女房に「あんた、5時までに帰ってきたらいいからロンドンに行って来なよ」「そう、じゃ、おみやげ買いがてらぶらついて来るわ」と、地下鉄に乗って出かけた。
うん、そうこなくっちゃと、車で10分もかからないロイヤル・ウィンブルドンへ。

 ロイヤル・ウィンブルドンは1870年設立。ノース・デボンに次いでイングランド2番目の古いコースである。very private club としても有名な名門クラブ。
 電話をかけると、ハンディキャップ証明を持って来てくださいとのこと。フィは60ポンド(12,000円)。
 地下鉄のウィンブルドンの駅から歩いても20分はかからないだろうと思われる所にあり、さすがロイヤル、どっしりと名門らしい、しかし、威張らない佇まい。
 コーヒーを飲もうとハウスに入っていったら、セルフでコーヒーが飲めるように用意されている。自分でカップに入れてお金をどこにおくのかな?とキョロキョロしていたらボーイさんが入ってきた。「ペイ、どうすんの?」と聞くと、「さあ?いいんじゃない?」という。さすが名門。鷹揚なモンである。
 雨が上がり、パットを少し、ピッチを少しして、4人組のじいさん連中の後、10時18分ティオフ。

 まさにパークランドコース。起伏はゆったりとしていて、雄大な感じ。が、とにかく長い。白から打っているのだが、黄にしたところでほんの少ししか変わらない。
 2番で、じいさん達が打ってこいというのでパスする。前は犬をつれた2人組の女性。が、ぜんぜん追いつかない。
 3番・408ヤード2打目から上り、4番・403ヤード、5番・167ヤードのショートで6番・269ヤードのサービスミドルでやっとパー。アウト42(パー35)。
 インもまた長い。11番・420ヤード、12番・452ヤード、14番・448ヤード、15番・420ヤードのミドル。
 一人で黙々とゴルフをしていると、「これか、ゴルフゲームではなく、ゴルフィングというのは!」と、悟ったようになる。ゲームではなく、パーおじさんとゴルフを原点で楽しんでいる気分になってくる。

 それにまた、このコース、セコさとかイジワルさとか、見え見えの戦略性を要求するとかが一切ない。ドーンとここに打って来い。失敗したら知恵と技術の限りを尽くしてかかってこい!というまったく気持ちのいいコース。
インは44(パー35)。午後1時25分ホールアウト。
 バーでワンパイント・ラガー、ホットドッグ、コーヒー。コーヒーはドリップ器のまま持ってきて、目の前で点ててくれて1ポンド(200円)。これでこの値段なら朝のはやっぱりフリードリンクかなあ?

 ウィンブルドンの町で自分の靴や会社へおみやげを仕込みマンションへ。シャワーをし、一休みしてヒースローへ。
 車を返し、免税店でキャドバリーをどっさり買い、空きすきの座席で機内食を食べ、12時間の飛行のうち10時間は寝て帰国。

参考アドレス

カンバーウェル・パーク・ゴルフクラブ Cumberwell Park Golf Club - Our facilities o...
ロイヤル・ノース・デボン・ゴルフクラブ  Royal North Devon Golf Club
サウンタン・ゴルフクラブ saunton golf club
ロイヤル・セントジョージス・ゴルフクラブ  Royal St Georges
ロイヤル・シンク・ポーツ・ゴルフクラアブ  R.C.P.G.C. Homepage
ロイヤル・ウィンブルドン・ゴルフクラブ  Royal Wimbledon Golf Club

ウィンブルドンのベンチ  この景色、いいと思いませんか?
ロイヤル・ウィンブルドン・ゴルフクラブの練習グリーン脇のベンチです。
日がな一日、パッティングの練習をしたり、本を読んだり、ビールを飲んだり、ゴルフ仇とあれこれダベったり、昼寝をしたり……。

 いいですねえ。
ただし、このように静かでなくてはならないですね。
クラブという、そのクラブライフがしっかりと息づいているようで、うらやましく思いました。